ASD・自閉スペクトラム症に対する有効な療育プログラム

もう 20 年も前になる。 当時は自閉スペクトラム症(以下 ASD )への強い課題意識が、 福祉や療育分野に続いて教育でも生じており、 オゾノフら (1998) のような, ASD に対して有効な療育プログラム共通する特徴( 1 . 構造化された行動療法的で教育的なアプローチをとっていること 、 2 . プログラムを家庭でも実施するために親のトレーニングも行っていること、 3 . 5 歳までに開始していること、の 3 点を挙げた。)を示す論文が散見された。 オゾノフら (1998) < ASD に対して有効な療育プログラム共通する特徴 > 1 .構造化された行動療法的で教育的なアプローチをとっていること 2 .プログラムを家庭でも実施するために親のトレーニングも行っていること 3 . 5 歳までに開始していること つまり、 応用行動分析( ABA )や構造化を中心として体系化されたプログラムに則り、家族と協働して , 可能な限り早い時期から行なうべきだ ということになる。 あれから 20 年。上述した三つの要素を「家族との協働」をという視点から、私なりにまとめ上げ、体系化してきた。 学習の基本構造には,4つの階層があると考えています。 第 1 層が環境調整,構造化です。発達障がいの支援には、ライフステージで起こりうる行動問題等のリスクを回避することが先決です。例えば ASD へのエチケットであると言われるまで一般的になった「構造化」という手法を用います。感覚処理問題に備えた環境の工夫や,活動及び時間の見通しがたちやすい教室環境の工夫です。私は特に「三種の神器」として,スケジュール,コミュニケーション,タスク・オーガナイゼーションの枠組みを提案しています。 第 2 層が脳科学に基づく一人一人の理解です。まずは周囲がご本人のことを理解することが先なのです。発達障がいを理解するための知見は、日進月歩といっても過言ではありません。国立特別支援教育総合研究所時代に上梓した自閉症教育実践マスターブック( 2008 )(以下「マスターブック」)では、「学びを促進するための特性の理解と活用」という表現を用いま...